撮影技法「肖像写真(メイン光としてのストロボ/野外ロケ編)」

テーマ【闇を照らす光】
旧約聖書の始め、天地創造の七日間でのこと。
最初の一日目、混沌の闇の中で神は言った、
「光りあれ」と。
光が生まれ、これを昼とした。

最初の第一声でまず光を作ったとされるのは興味深いが、
現代の写真撮影において、人工の太陽光「ストロボ」の発明により、
われわれカメラマンは光をある程度は操ることができるようになった。

今回は野外ロケでのストロボライティング例を上げていく。
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2011/12/11 よみうりランド
作品「刀語(かたながたり)」
鑢七実 役:桜花さん

設定はすべて同様。

D7000
AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
F8 1/160秒 ISO100
マルチパターン測光
WB:オート RAW
スレーブ発光


ストロボと言えばカメラの内蔵ストロボのイメージどおり、まず「明るさを補う」すなわち「暗いところを照らすもの」というのがそもそもの用途だと言える。

暗い室内や野外に置いても日陰、あるいは夕方〜夜間の撮影において気軽に安定した光量を得ることができる。
今回はストロボをメイン光にしたシンプルなライティングについて紹介する。




ロケーションは木立に囲まれた山門。
本来、木漏れ日程度の薄暗い場所であった。

これはノンストロボのテストカット。
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被写体と後ろの木立との明暗差がかなりあるのがお分かりいただけるだろう。

撮影環境が暗い場合、単純に被写体を適正露出で写すには高感度撮影か、
あるいはレンズの絞りを開放して撮影する方法が考えられる。

だが、何れにしても被写体の暗い顔の部分に露出を会わせるため、
背景の木立は真っ白く飛んでしまう、あるいはボケボケになってしまうだろう。
また光の質、演色性も悪い。
地明かりはぼやっと濁った眠たい雰囲気で、色被りも処理しなくてはならない。

そこで安定した光を生む「小さな太陽」、ストロボを発光させるという選択をする。

ライティングは強力なグリップタイプストロボのPanasonic PE-60SG を使用。
三脚に白傘バウンスのセッティングを行い、硬い直射光を柔らかい光に変換し、拡散させて全身を照らす。
ストロボアクセサリーである白傘の役割は天井バウンスや壁バウンスと同様で、どこでも好きな場所、角度に設置できる白壁を携帯しているとお考えいただきたい。

発光テストのワンシーン。
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当たり前だが、もともと暗かった場所が明るく照らされているのがお分かりいただけるだろう。
ストロボは遠くに離してスレーブ発光に設定し、内蔵ストロボの微発光に同調させている。
(注意:スレーブ発光はストロボの閃光を感知して光る。複数のカメラマンがストロボ撮影をしているシチュエーションでは迷惑になるので注意が必要)

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なお、このようにそもそもが暗い環境の場合、レフ板だけで対応しようとしても無力だ。
「レフ板」は自ら光らずに光を反射して輝く月のイメージ、「ストロボ」は自ら光り輝く太陽と考えると分かりやすい。
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例えばストロボで人工の光さえ作ればこの右サイドの白壁などは巨大なレフ板として機能してくれる。
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レフ板効果でこのカットのように、陰になっている部分でも真っ暗にならず、柔らかく照らし出している。

機材については、チョイスしたPanasonic PE-60SGは十分な光量と、シンプルな機構による耐久性と信頼性の高さが魅力のグリップタイプストロボ。
バッテリー部が別になっており、単二乾電池6本で作動するといった可搬性の良さはロケ撮影に気軽に持っていける。

ただ、重要なのはストロボの機種に関してよりも、まずストロボをカメラから離して使うという点。
まっすぐ正面から照らすのではなく、あえてサイドへ光の軸をずらすのは被写体に美しい陰影のグラデーションを付け、背景から立体的に浮き立たせるのが狙いである。
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イベントでのコンパニオン撮影の分野ではストロボを使ったいわゆる「陰をなくすことへのこだわり」が見受けられるが、あれは混雑する会場を移動しながら撮影するという必然性が生んだ極めて特異的なスタイルではないだろうか。
そうした平面的な順光表現はライティングの一表現にすぎず、クリップオンタイプであってもただ漫然とカメラのホットシューやブラケットに付けているだけではもったいない。

陰を邪魔物として被写体の後ろに押し込めてしまうのではなく、むしろ美しい陰をつけていくことがライティングの基本的な考え方。

混雑するイベントなどではなく、野外ロケやスタジオ撮影など広い場所ならばストロボをカメラから解き放つーー陰影をコントロールするライティングの奥深さはそこから始まると私は思う。
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by ume13years | 2012-02-24 22:52 | 肖像写真
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